SANAA(妹島和世+西沢立衛):透明性と浮遊感の建築

Discover the tranquil beauty of Osaka Castle reflecting in a serene garden pond at sunset.

はじめに:境界を溶かす建築

SANAA(Sejima And Nishizawa And Associates)は、妹島和世と西沢立衛による建築ユニットです。1995年に設立され、2010年にプリツカー建築賞を受賞しました。彼らの建築は「透明性」「浮遊感」「境界の曖昧化」をキーワードに語られることが多く、薄い屋根、ガラスのカーテンウォール、有機的な曲線で構成される空間は、建築の重力から解放されたかのような軽やかさを持っています。

SANAAの建築哲学

透明性と開放性

SANAAの建築で最も特徴的なのは、内と外の境界を極限まで曖昧にする透明性です。ガラスのカーテンウォール、薄いスラブ、最小限の構造体によって、建物の中にいながら周囲の環境を常に感じることができます。壁というよりも「膜」のような建築と言えるでしょう。

プログラムの平等性

もう一つの特徴は、空間のヒエラルキーを排除する設計です。従来の建築では、メインホールやロビーといった空間に序列がありますが、SANAAの建築では各空間が対等に並置され、利用者が自由に動き回ることができる「フラットな空間」を目指しています。

SANAA代表作品ガイド

金沢21世紀美術館(2004年、石川県金沢市)

SANAAの代名詞ともいえる作品です。直径112.5mの円形プランを持つ美術館は、360度どの方向からでもアクセスできる「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトとしています。

外壁の大部分はガラスで、内部からは兼六園の緑や金沢の街並みが見えます。内部は大小様々な展示室が自由に配置され、来館者は特定の動線に誘導されることなく、自分だけのルートで美術館を探索できます。

レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」は、この美術館で最も有名な恒常設置作品です。上から見ると水で満たされたプールに見えますが、実際はガラスの上に薄い水の層があるだけで、プールの「底」には展示室があります。建築とアートが一体となった空間体験の好例です。

入館無料(交流ゾーン)、展覧会ゾーンは展覧会ごとに有料。10:00〜18:00(金・土は20:00まで)。月曜休館。金沢駅からバスで約15分。

ニューミュージアム(2007年、ニューヨーク)

マンハッタンのバワリー地区に建つ現代美術館で、異なるサイズの直方体のボックスを積み上げたような外観が特徴です。各ボックスが少しずつずれることで、建物に軽やかなリズムが生まれています。アルミメッシュの外装が、ニューヨークの光を柔らかく反射します。

ロレックス・ラーニングセンター(2010年、スイス・ローザンヌ)

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のキャンパスに建つ学習施設で、ワンフロアの巨大な建物が波打つような起伏を持つ、SANAAの最も革新的な構造の一つです。コンクリートの床スラブが丘のように盛り上がり谷のように下がることで、壁のない広大な空間の中に自然と領域が生まれています。

ルーヴル・ランス(2012年、フランス・ランス)

パリのルーヴル美術館の分館として、フランス北部の旧炭鉱都市ランスに建てられました。5つの長方形のボリュームが敷地に散りばめられ、鏡面仕上げのアルミ外壁が周囲の空と緑を映し出します。建物が風景に溶け込む——SANAAの「消える建築」のコンセプトが最も大きなスケールで実現された作品です。

西沢立衛の個人作品

豊島美術館(2010年、香川県豊島)

西沢立衛の個人設計による豊島美術館は、建築とアートと自然が完全に融合した唯一無二の空間です。水滴のような形をしたコンクリートシェル構造の建物は、柱がなく、2つの大きな開口部から自然の光、風、音、雨が入り込みます。床面には内藤礼のインスタレーション「母型」——わずかな水の湧出と流動——が展開し、自然現象そのものがアートとなる空間を体験できます。

犬島「家プロジェクト」

西沢立衛は犬島の「家プロジェクト」で複数の作品を手がけています。集落の空き地や空き家に介入するミニマルな建築は、透明なアクリルや鏡を使い、島の風景と溶け合うような空間を生み出しています。

妹島和世の個人作品

すみだ北斎美術館(2016年、東京・墨田区)

葛飾北斎の作品を収蔵・展示する美術館で、鏡面仕上げのアルミパネルで覆われた外観が、周囲の下町の風景を映し出します。建物に切り込まれたスリットが、通りからの視覚的な透過性と動線を確保しています。

SANAAの建築を体験するためのヒント

光の変化に注目:SANAAの建築は、ガラスと薄い構造体で構成されているため、天候や時間帯による光の変化が空間の印象を大きく左右します。晴れた日、曇りの日、雨の日それぞれに異なる美しさがあります。

動きながら体験する:SANAAの建築は、一か所に立って鑑賞するよりも、建物の中を歩き回ることで真価を発揮します。金沢21世紀美術館では、円形の美術館を何度もぐるぐると回ってみてください。見える景色が常に変化することに気づくでしょう。

周囲の環境も作品の一部:SANAAの建築は周囲の環境と一体化するようにデザインされています。建物だけでなく、建物を通して見える風景、建物に映り込む空や緑にも注目してください。

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